愚痴・憎まれ口・無駄口・世迷言・独断と偏見・屁理屈・その他言いたい放題!
その9.≪ビデオでお稽古、ハイ、123?!≫
かなり以前から、舞踊ビデオ販売の電話やダイレクト・メールが、頻
繁に寄せられるようになりました。最初は、一流の歌舞伎俳優や殺陣
師による、女形と立役の身体の使い方の基本や、小道具の扱い方、殺
陣の様々な型などを解説したものが紹介されていたので、僕もいくつ
か購入しましたし、とても参考になりました。その内今度は、一流の
歌舞伎俳優や舞踊家の舞台を撮影したものが、紹介されるようになり
ました。そして現在では、それを観て踊りを習得するのが目的である
事を、ハッキリと明記したビデオが売られるようになりました。昔の
レコードにも、振り付きのものが沢山ありましたが、写真と解説を見
ただけではなかなかスンナリとは踊れませんし、「間」も正確には分
からないので、あくまでも参考程度にしか活用出来ませんでしたが、
ビデオの場合は、ある程度の経験者なら、容易に振りを習得する事が
可能です。 。
それも、ある流派がその一門の弟子達の為に製作販売しているのでは
なく、様々な流派の舞踊家が(それも、かなり名の売れた方達が)、
振付を担当しておられます。ということは、誰もが流儀に関係なく、
ビデオで練習した踊りを人前で踊ったり、弟子に教えて収入を得ても
良いようにも解釈出来ます。しかし実際には、そういうことを許して
いる流儀があるという話は、聞いたことがありませんし、お稽場でビ
デオを撮る事さえ、いまだに厳しく禁じている舞踊家も、大勢いらっ
しゃいます。それでは、このような舞踊ビデオが公然と販売されてい
て、その製作に有名な舞踊家が参加されていると言う事を、どういう
風に理解したらよいのでしょうか。 。
こんな風に書くと、いかにも僕が「舞踊ビデオの販売や、ビデオによ
る踊りの習得などもっての外だ」と批判しているように誤解されるか
もしれませんが、決してそうではありません。時代はドンドン変って
行きますから、最先端の科学を応用した新しい習得方法が開発される
のは、なにも日舞に限らず、どんな分野でも益々活発になっていくで
しょうし、便利なものなら利用しない手はありません。NHKの「芸
能百選」や「芸能花舞台」を、欠かさず収録して勉強している方もい
らっしゃるようです。それに、どんなに丁寧に作られたお稽古用ビデ
オを使ったとしても、最終的には師匠に前から見て頂いて、細やかな
手直しをして頂かなければ、上達する筈がないのは言うまでもない事
です。 。
昔の、レコードも何もなかった時代の踊りの師匠は、1つの踊りを習
得するのに、踊りの振りだけではなく、唄も浄瑠璃も三味線も、全て
習得していなければ教える事が出来ませんでした。今では想像もつか
ないほど大変な作業だったと思います。その代わりレパートリーは、
それ程多くは必要としなかったようです。現在の我々は、カセット・
テープもCDもあるので、一々演奏出来なくても教える事は出来ます
が、必要とされるレパートリーは格段に増えているので、昔の師匠と
は違った意味での厳しさがあります。さてそれでは、新世紀の師匠達
には、一体何が要求されるのでしょうか?テレビやビデオやCPで、
「振り」も「間」もキチンと覚えて来た弟子に、一体何をどんな風に
指導すれば良いのか!僕なりの考えをここに書くことは簡単ですが、
出来れば舞踊家の方達其々に、ジックリと考えて頂きたいのです。も
し、「みんなの談話室」にでもご意見を書いて頂ければ、これからの
舞踊師匠の存在価値について、皆で考える事が出来るのですが・・・
先に書いたビデオ販売の件ですが、出来れば各流儀の宗家や家元の総
意として、一定のルールを取り決めて頂けないのでしょうか。暗黙の
了解なんていうことは、これからの時代には通用しないと思います。
キチンとしたルールに則って販売されるのなら、欲しい人は安心して
購入出来るでしょうし、ビデオで習得した踊りを誰に批判される事も
なく、公然と披露する事も教える事も出来るでしょう。またルールに
違反したやり方をした人には、当然それなりのペナルティーが与えら
れる筈ですから、「何でもOK!」と言う訳にはいかなくなるでしょ
う。これからは、純邦楽の作詞・作曲・編曲・演奏はもとより、舞踊
の振付についても、著作権を守ろうとする動きがもっと強まるでしょ
うし、そういう時代の流れの中での、舞踊関係者の権利と義務につい
て、よりハッキリとした規範を作るのか、それとも「何でもOK!」
にしてしまうのか・・・後進の人達の為にも、早急かつ慎重にお答え
を頂きたいものです。 。
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